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「あなたは、死神なんですか?」
 背後から呼びかけられ、千葉は思わず足を止めた。
 街の中心にあるスクランブル交差点での出来事だった。
 空はどんよりとした雨雲に覆われ、ぱらぱらと小雨が降り続いており、交差点を行き交う大勢の人間が傘をぶつけ合って歩いている。
 肌寒い季節に雨が重なると、人間達の表情は険しくなる。だが、千葉はどんな季節でも雨が嫌いではなかった。
 雨が地面を叩く音や、傘のぶつかる音が、まるでリズムに乗って流れる音楽のように聞こえるし、晴れた天気を知らないという理由もある。
 千葉が仕事をするときは、決まって雨が降るからだ。
 同僚に青空を見たことがないと漏らしたこともあったが、同僚は訝しげな表情で――それこそ珍獣を見るような目で――千葉を哀れんだ。
 もちろん青空を見たことがないからと言って、仕事に支障はない。
 だから千葉は、雨が嫌いではなかった。
 ――話を戻そう。
 振り返ると、そこには少女が立っていた。
 先ほどまで眺めていた野外ライブに出演していた少女だ。煌びやかな衣装を纏っていたその時と違って、今はシックな私服姿だった。
 千葉は広げた傘を持ち直して、背広の胸ポケットを探った。
 ポケットから取り出したのは雑誌の切り抜きである。
 四人の少女が抱き合うようにポーズを取っていて、見方を変えれば官能的な雰囲気すらある。野外ライブを見ていたときに、隣の男が落として行ったものだった。
 切り抜きの真ん中に、目の前にいる少女と同じ顔が写っている。クールで冷たげな視線をカメラに向けた少女。
 名前はたしか、
「如月千早か?」
「はい」
 彼女はこくりと頷いた。日本人形のように黒い長髪は、あまりの黒さに青がかって見える。写真と変わらない冷たげな瞳が、今は不安を色濃く宿していた。
 そうだ、と千葉は思い出した。彼女にはぜひ言っておきたいことがあったのだ。千葉は千早に近寄り、こう言った。
「君のミュージックは素晴らしい!」
 興奮のあまり彼女の手を握ろうとして、おっと、と慌てて手を引っ込ませる。
 人間の体に素手で触れることは禁止されており、非常事態をのぞいて、破れば罰則が待っている。
 規則を守らないわけにもいかず、千葉は手袋を取り出して両手にはめてから、彼女の手を握って振った。
「音楽が好きなんですか?」
「ああ、とても好きだ。それ以外に、特に興味はない」
「そうなんですか。……あの、それよりも」
 彼女がなにかを言いたげに眉を下げたので、千葉は握手もそこそこにして千早に向き合った。真っ直ぐに視線を飛ばす様子は、その年頃の少女よりも大人びて見える。
「あなたは、少なくとも人間じゃないですよね」
「どうして、そう思うんだ」
「あなたと似た雰囲気の人を見たことがあるんです。……弟が事故に遭う少し前に。私の弟は、私が子供の頃に亡くなっているんです」
「ほう」
 これは驚いた。千葉は思わず感心してしまう。
 彼女の弟が死んでいたことにではなく、千葉を死神であると見抜いた千早に、である。
 千葉が人間ではないと見抜いた人間はこれまでも何人かいた。
 しかし、それはあくまで“不気味である”とか“寒気がして震えたり”という程度でしかなく、ましてや「あなたは死神ですよね」と堂々言い放った者は珍しい。
 面識のない人間に向かって死神宣言をするおかしな人間は、そういない。 
「さっきのライブ会場であなたを見かけたので、もしかしたらと思って」
「俺に気づいていたのか?」
「あなたの雰囲気が独特過ぎるんです」
 千葉は首を傾げた。仕事の都合上、人間に紛れるのが常の死神にとって、正体がバレることは極めて珍しい事例である。それを雰囲気で感じることも、普通ではない。
 この子は少し特殊だな。
 子供の頃に死神――私ではない。おそらく同僚の誰かだろう――を目撃したからかもしれないと適当にあたりをつけてみた。
 もっとも、そういう事例は聞いたことがないから、本当に適当にだが。興味がないことを深く考えても時間の無駄である。
 人間がどこでどう死のうが、如月千早が死神を見分ける能力を持っていようがどうでもいい。人間にはさほど興味がないからだ。
 あるのは、彼らが生み出すミュージックだけだった。それでも千葉は人間の死を見定めにこうしてやって来る。
 何故か。
 それが千葉の仕事だからだ。



 ――続きは冬コミにて!
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まとめ【C81 新刊 お試し】

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